ジムで「今日はベンチプレスを4セットやった」と言うとき、バーだけのセットや軽いアップセットまで含めるべきでしょうか。

答えは、何のためにセット数を数えるかで変わります。 ただし筋肥大や筋力の進捗を見る「本セット数」「ハードセット数」なら、通常の軽いアップセットを本セットと同列には扱いません。

結論:アップセットは記録しても、本セットとは分ける

  • 準備目的の軽いアップセット → 本セット数には通常含めない
  • 本番重量へ近づけるランプアップセット → 準備として別記録
  • 実際にかなりきつくなったセット → 疲労と刺激は無視しない
  • 総挙上重量を計算する場合 → 目的によっては含める

「数える/数えない」を1つの答えにするより、本セット・週のハードセット・総作業量・ログを分ける方が正確です。

アップセット、ランプアップ、本セットの違い

種類 主な目的 本セットに数える?
アップセット/ウォームアップセット 体温、関節、動作の準備 通常は数えない
ランプアップセット 本番重量へ段階的に近づく 通常は別扱い
本セット 目標の負荷・回数・努力度で刺激を作る 数える
予想以上に重くなった準備セット 準備目的でも疲労が大きい 本セット同様の影響を考慮

アップセットとは

アップセットは、重い本セットへ入る前に身体と動作を準備するセットです。

目的は、

  • 動作パターンを確認する
  • 関節の感覚を見る
  • 可動域を確認する
  • 当日の重量感覚を知る
  • いきなり高負荷へ飛ばない

ことです。

アップセット自体で限界まで追い込む必要はありません。準備で疲れすぎて本セットが落ちるなら、本来の役割から外れています。

ランプアップセットとは

軽い重量から本番重量まで段階的に上げる途中のセットです。

例えばベンチプレスの本セットが80kgなら、

  • 20kg × 10
  • 40kg × 6
  • 60kg × 3
  • 70kg × 1〜2
  • 80kg 本セット

のように上げることがあります。

これは固定処方ではありません。扱う重量、経験、気温、最初の種目かどうかで必要量は変わります。重量が上がるほどアップセットの回数を減らし、疲労を残さないのが一般的です。

本セットとは

本セットは、その日のプログラムで「進歩や刺激を作るためのセット」です。

例えば「60kgで8〜10回を3セット、1〜2RIR」と決めているなら、その3セットが本セットです。

同じ60kgでも20回以上余裕でできる人が5回だけ行えば、それは通常本セットとは言いにくいでしょう。反対に、アップのつもりでも想定以上にきつくなり0〜1RIRなら、疲労は本セットに近づきます。

プログラムのセット数にアップセットを含める?

通常は含めません。

「ベンチプレス3セット」と書かれているプログラムなら、一般的には3本の本セットを意味します。そこに軽い準備を2〜4セット追加しても、プログラム上の3セットが5〜7セットになったとは考えません。

週のセット数には含める?

「週のハードセット数」を数える場合

通常の軽いアップセットは含めません。

筋肥大のボリュームを「胸を週10セット」などと数える場合、準備セットまで全部足すと、実際の高努力セット数を過大評価します。

総挙上重量を数える場合

重量 × 回数 × セットでトン数を計算するなら、アップセットを含めることはできます。

ただし、その値は「ハードセット数」と同じ意味ではありません。軽い20kg×10も、80kg×8の本セットも、計算上は仕事量に入りますが、トレーニング刺激を同じ1セットとして扱うわけではありません。

物理的な作業量として見る場合

当然、アップセットも身体は動いています。ゼロではありません。

だからこそ「刺激として数えない=疲労もゼロ」と誤解しないことが大切です。

アップセットは筋肥大にカウントされる?

典型的な軽いアップセットを、筋肥大のハードセット1本と同じ価値として数えるのは不適切です。

一方で、準備セットが高回数になり、筋肉がかなり疲れ、限界にも近づいたなら、その刺激を完全に無視するのも不自然です。

つまり、

ラベルではなく、実際の負荷・回数・努力度を見る

ということです。

「カウントする?」を4つに分ける

1. プログラムの本セットに数える?

通常のアップセットなら数えません。

2. 週のハードセット数に数える?

軽い準備なら通常は数えません。

3. 身体への作業・疲労としては存在する?

はい。特に重いランプアップや高回数のアップは疲労を作ります。

4. ログに残す?

必要なら残します。ただし本セットと区別できる形が理想です。

アップセットは記録した方がいい?

方法1:本セットだけ記録する

シンプルで、前回との比較がしやすい方法です。

方法2:アップセットも別で記録する

重い種目、技術種目、復帰直後などでは、どんな流れで本セットへ入ったかを残す価値があります。

大切なのは混ぜないことです。

アップセットを本セット履歴へ混ぜると何が起きるか

週のセット数が膨らむ

本当は胸のハードセットが12本なのに、アップまで足して20本に見えることがあります。

平均重量が下がる

20kg、40kg、60kgのアップまで平均に入れると、本セットの推移を見にくくします。

PR判定が汚れる

高回数の軽いアップが「最大回数」のように扱われると、意味のあるPRと混ざります。

推定1RMの推移が崩れる

準備セットは限界近くまで行っていないため、回数から能力を推定する材料として不向きです。

次回の重量判断がしにくくなる

前回どれが本セットだったのか分からなければ、「次に何kgを持つか」という判断が難しくなります。

すべての種目でアップセットが必要?

必ずではありません。

最初の重いスクワットで十分に温まり、その後レッグエクステンションへ移るなら、同じ量のアップは不要かもしれません。

一方、ベンチプレスの後に全く違う動作の重いRDLへ移るなら、RDL用の準備は必要です。

アップセットは何セット必要?

固定数はありません。

必要量は、

  • 本セットの重量
  • その日の最初の種目か
  • 種目の技術要求
  • 経験
  • 気温
  • 直前に行った種目
  • けが歴や違和感

で変わります。

重い複合種目ほど段階的に上げることが多く、軽い単関節種目では1回の軽い確認だけで十分なこともあります。

重くなるほどアップの回数は減らす?

一般的にはそうです。

軽い重量では動作確認のため少し多めに反復し、本セットへ近づくにつれて1〜3回程度へ減らすと、疲労を抑えながら重さに慣れやすくなります。

アップセットは何RIRにする?

通常はかなり余裕を残します。

アップの目的は失敗することではありません。最後のランプアップが毎回0RIRなら、本セット前に実質的なハードセットを追加していることになります。

RIRの考え方を使うなら、アップは「正確に何RIR」と固定するより、明確に本セットより楽な努力度に保つ方が実用的です。

最後のアップが妙に重かったら?

その日は本セットを機械的に予定どおり始めなくても構いません。

  • 休憩を長くする
  • もう1回軽い確認をする
  • 本セット重量を少し下げる
  • 痛みや違和感があれば中止する

アップセットは準備だけでなく、当日の状態を確認するテストにもなります。

よくあるアップの失敗

全アップを週のセット数へ足す

ハードセット数を過大評価します。

アップで疲れ切る

本セットの質を落とします。

全種目に同じアップを使う

スクワットとサイドレイズでは必要な準備が違います。

パーセンテージを厳密に守りすぎる

アップは競技規則ではありません。当日の状態に合わせます。

軽い重量だから準備ゼロにする

技術が必要な種目では、重量が軽くても動作確認に価値があります。

「アップだから疲労ゼロ」と考える

重いランプアップは本セットに影響します。

例:アップを全部数えるとボリュームがどう見えるか

月曜のベンチ:アップ3本+本セット3本

木曜のベンチ:アップ2本+本セット3本

全部を「胸11セット」と数えると、本当に比較したい本セットは6本なのに、5本の準備が混ざります。

週のトレーニング量を判断するときは、まず6本の本セットを見る方が分かりやすいでしょう。

アップセットとPR

アップセットでPRを追う必要は通常ありません。

20kgで20回できたからといって、本番のベンチ能力が伸びた証拠にはなりません。PRや推定1RMは、比較可能な本セットを中心に見る方が意味があります。

IronYouでの扱い方

IronYouでアップも残すなら、理想は本セットと区別して扱うことです。

そうすれば、

  • 前回の本セットがすぐ分かる
  • 週のハードセット数が膨らまない
  • PRが準備セットで汚れにくい
  • 同じアップ手順を再現したいときは履歴を確認できる

という利点があります。

次のトレーニングで使える簡単なルール

明らかに軽く、準備目的だった?

→ アップセット。本セット数には通常含めない。

計画した刺激を作るためのセットだった?

→ 本セットとして数える。

アップのつもりがかなりきつかった?

→ ラベルだけで無視せず、その疲労を次の本セット判断に反映する。

FAQ

アップセットは本セットに数えますか?

通常は数えません。本セットはプログラムで狙った負荷・回数・努力度のセットです。

週のセット数にアップを含めますか?

筋肥大のハードセット数なら、通常の軽いアップは含めません。

アップセットでも筋肥大しますか?

軽い準備セットの寄与は本セットより小さいと考えるのが実用的です。ただし限界近くまで行えば、刺激と疲労は無視できません。

アップセットも記録すべきですか?

必須ではありません。記録するなら本セットと分けると履歴が読みやすくなります。

アップは何セット必要ですか?

固定数はありません。重さ、種目、経験、当日の状態で調整します。

毎種目アップが必要ですか?

いいえ。すでに同じ動作や筋群が温まっている場合は少なくて済むことがあります。

アップセット間も休憩しますか?

必要です。軽い序盤は短く、重いランプアップでは本セットへ疲労を残さないよう十分休みます。

エビデンスについて

ウォームアップは運動パフォーマンスを改善し得ることが報告されていますが、最適な方法は種目や状況で変わります。Fradkinらのメタ分析はウォームアップによるパフォーマンス改善をまとめています。

一方、「軽いアップセットを週のハードセット1本として数えるべき」という普遍的な基準があるわけではありません。セットの役割と努力度を分けて管理するのが実用的です。

準備と進歩を分けて記録する

アップセットは重要です。しかし、重要だから本セットと同じ意味になるわけではありません。

準備は準備として残し、進歩を判断するときは比較可能な本セットを見る。 これがログを最も使いやすくします。